マイクロエース製E10

 昨年紹介した4110に続いて動輪が5軸のE10を紹介します。4110の文中でも書きましたが、このE10は4110の後継機として1948年に5両が製造されました。4110が配置されていた奥羽本線の板坂峠の急勾配区間は電化工事が行われていましたが、GHQの指令で一時中断。その間4110の老朽化が激しかったため、電化までのつなぎとして本機は製造されました。本機の特徴は、当初運転士を煙害から守る目的で煙突側を後ろにする形で走行するように設計されましたが、後に北陸本線へ転用された再に他の機関車と同じく煙突を前にして走行するように変更されながら運転席位置を変更しなかったため、国鉄車両では珍しく運転席が右側にある事です。また、4110と同じ5軸の動輪があるため、曲線通過性能を上げるため、第三、第四軸がフランジレスになっています。その他4110に比べ機体が大きくなったために前輪1軸、従輪2軸が追加され軸配置は1-E-2のテキサスとなっています。運用を開始した翌年の1949年には板坂峠の電化が完成したため、九州の肥薩線を経て北陸本線倶利伽羅峠での補機に転用され1955年まで利用されました。その後米原で交直流区間の繋ぎとして運用されましたが、1962年に廃車となりました。
 私が生まれる前に廃車になっているので、当然現役で走っている姿は見たことがありませんが、このE10は2号機が青梅鉄道公園に静態保存されており、実は子供のころから非常に親しみがある機種でした。青梅鉄道公園には他にD51という有名機がありますが、私はむしろこのE10の方が好きでした。D52クラスの大きなボイラに5軸の動輪のメカに惹かれたのだと思います。そういうわけで、このE10、特に2号機は是非欲しいアイテムでした。




 模型はマイクロエースから1号機、2号機が発売されており、またトレインショップから金属製の製品が発売されていますが、金属製の物は高額でしかも現在入手できずオークションにもめったに登場しません。E10 1号機は時々中古が販売されたり、オークションで見かけますが、なかなか2号機は出てこないため、昨年11月にオークションに出品された際にはかなり高額になり、最終的な落札価格は標準価格の2倍以上になってしまいましたが無理して落札しました。製品としては実機の雰囲気を良く伝えるもので非常に満足していますが、購入直後は走行性能はあまり良くありませんでした。オークションの文言では「長期間棚に眠っていた」とあり、さもコレクション品的な表現でしたが、動輪をアルコールで掃除したところ綿棒があっという間に真っ黒になり、実際はかなり使われていたのでは無いかと思われます。掃除した結果かなり走行性能は向上しましたが、せっかく前輪、従輪があるにもかかわらず、集電は動輪だけからのようです。Nゲージ車両の走行性能はほとんど集電能力に関わっていますので、定年後に宝塚に戻ったら、従輪から集電するような仕組みを追加してやろうと思っています。また、実機は第三、第四動輪がフランジレスですが、模型は第三動輪のみとなっています。多分コストダウンのために第二動輪と第四動輪は同じパーツとなっているのでしょう。フランジを削る事もできますが、削った後は真鍮の地肌が出て錆びやすくなるので、止めておいた方が良いでしょう。なお、この製品もライトは前進・後退に関係なく前方のライトのみ点灯し、後部ライトはダミーとなっています。が、タンク機は後退で走る事も多いし、この機種の場合ライトのためのLEDを仕込むのも難しくないでしょうから、いずれは改造してやりたいと思っています。