マイクロエース製9600形

 今回は動輪が4軸ある9600形です。本機は「クンロク」とか「キューロク」の愛称で呼ばれ、軸配置は1-Dのコンソリデーションです。最初の製造は1913年と古く、しかも1941年までの長い期間に総数828両が製造されました。この9600という形式番号ですが、実は1912年に試験的に作られた12両に最初に与えられたものですが、先の12両に問題があったためこれを改良して新たに製造される事になり、先に製造された12両は形式番号は9580形に改められました。本機の設計思想は台枠の上に火室を乗せる事で大きなボイラーを実現し出力を高める事にありました。が、その結果重心位置が非常に高くなり、径の小さな動輪の影響もあって最高速度は65km/h程度に制限されました。製造後の配置では最初は幹線で用いられた例もありますが、多くは全国各地の亜幹線、支線で使われました。軸重が軽い割には牽引力が強いので路盤の弱い路線での貨物牽引には好んで使われ、戦後は北海道、九州の石炭輸送などで利用されました。製造期間が長くまた各地の機関区での改造等もあり、外観には非常にバリエーションが多い機種です。最後は室蘭本線の追分機関区の入換え用で使用されており、1976年の3月が最終仕業となり、保存機を除いては国鉄最後の蒸気機関車となりました。私はこの9600形も実際に動いている物は見たことがありませんが、子供の頃よく通っていた青梅鉄道公園に静態保存機がありましたので、親しみがあります。ただ、青梅鉄道公園に保存されている機体はキャブ下がS字に美しくカットされており、このような形状の物は初期に製造された十数台だけのようで、この形状のものは模型化されていません。




 さて、模型はマイクロエース製です。マイクロエースはプラモデルメーカーのアリイのブランドでしたが、今は会社として独立しているようです。実はマイクロエースは国産の蒸気機関車の全機種を発売済みで、さらに特定ナンバーモデルも多く発売しています。また設計図のみで製造される事のなかったC63を模型化していたり、C62を使った銀河鉄道999号セットなども発売していました。が、ここの製品にはちょっと問題があります。以前からKATO製品が大きなモーターのため1/150ではなく1/140で製造されていた事は書いてきました。マイクロエースもモーターの大きさによって設計に制約を受けていましたが、このメーカーは各部は1/150で設計しながら高さ方向だけ1/140くらいで設計しています。このため腰高の模型が多くオリジナルの雰囲気を失ってしまっている製品が多いのが実情です。例えば、既に紹介したC56やC50などの小型機などはそうですし、C58はどう見てもC58には見えないような外観になってしまっています。また、C62では従台車をD61から流用したため形状が実機とは異なった物になってしまっているなど細部に問題がある製品も多々あります。しかしながら、いくつかの模型は1/150でうまくデザインできていて、この9600形はマイクロエース蒸気機関車としてはKATOやTOMIXと比較してもむしろ優れていて、傑作と言われています。この9600形に関しては同社から非常に多くのバリエーションが発売されていますが、今回の1台は9600形としては最も標準的な外観のものです。私はこのデフレクター無しの9600形が好きでして、マイクロエースの9600形の中では発売時期はごく初期の物になりますが、あえてオークションでこの模型が出品されるのを待って落札しました。模型のモールドはKATOやTOMIXのような繊細さはありませんが、むしろ無骨な感じはこの9600形には似合っていると思います。マイクロエースの製品はナンバープレートも取り付け済みなので、ユーザーが後から取り付けるパーツはありません。走りもまぁ普通に走りますし前照灯も点灯しますが、後退時にも前のライトが点灯してしまいます。またテンダーにもライトは付いていますがダミーで点灯しません(おまけにレンズは黒いプラ成型のまま)。この機種はバックでの運用も多いので、テンダーのライトも点灯するように改造してやりたいところではありますし、安全弁はちゃんと金色なのにその後ろの汽笛はプラモールドの黒いままなど、追加パーツはありませんが手を加える余地は多々ありそうです。また、テンダーが前に少し傾いているように見えます。これはテンダーの3軸の車輪のうち後ろ2軸は集電するためバネが入っているのに対して前側の1軸にはバネが無いので傾いてしまっているのです。この辺りの設計の詰めの甘さもこのメーカーならではという感じですが。こういうのは気になりだすとどうにも気になるので、そのうち対処してやろうと思っています。本機も同じ機関区に2〜3台あってもおかしくないので、オークションで安い出物があったり、再生産やバリエーションモデルが発売されたら、また抑えておきたいと思っています。