あまり政治の事は書きたくありませんが

 参院選公示でここのところテレビでよく安倍晋三を見る機会があり、彼の発言が鼻につくのでちょっと書いてみます。まずはアベノミクスが成功か失敗か。

  1. 経済成長率:安倍政権が発足したのが2012年末。2013年の経済成長率は1.36%でまぁそこそこの数字でしょう。が次の2014年は-0.03%、2015年は0.47%でした。2014年以降成長は止まっています。
  2. インフレ率:アベノミクスで表明されている数少ない数値目標で2%が目標でした。2013年は0.36%で低迷しましたが、翌2014年は2.75%と好成績です。これは為替の円安誘導が功を奏して、輸入品の価格が上昇したためです。円安傾向は2013年からですが為替の変動はすぐに価格に反映されないため時間差で翌年の2014年で現れました。が、2015年は0.79%と逆戻りでした。
  3. 為替レート:明確な数値目標はありませんが円安誘導もアベノミクスの目標でした。2013年1月は$1=¥89.16でしたが翌2014年1月は$1=¥103.94と14.78円も円安になりました。さらに翌2015年1月には$1=¥118.31とさらに円安は進行し2016年1月もほぼ同じレートですが、ここのところ一気に円高傾向に振れて$1=¥104台に戻ってしまい、2014年1月頃の水準に逆戻りです。
  4. 有効求人倍率:ここのところ安倍が良く言っているのが有効求人倍率が1倍を超えたという事ですが、この数字を見る前にいろいろと考慮する必要があります。まずこの数字は職安を通しての数値のみという事です。世の中には新卒採用も含め職安を通さない求人は非常に多いと思いますが、これが考慮されていない数字であることは認識しておく必要があります。とはいえ、長年統計資料として用いられた指標ですのでそこは100歩譲ったとして、日本の人口は2008年から減少に転じており、さらに加速する高齢化のため、求職者自体が急速に減少しています。有効求人倍率は単純に求人数を求職者数で割っただけの数値なので、分母の求職者が減ればおのずと数値上昇します。さらに言うと、単純に求人の数と求職者の数しか考えていないため職のマッチング=求職者がどれだけ職に就けたかはこの有効求人倍率ではわかりません。なので、これが1を超えたと偉そうに吹聴されても何の意味もありませんし、国民をミスリードしようという意図が見え見えです。
  5. 完全失業率:という事で雇用の状況を把握するには完全失業率も見ておく必要があります。年平均では2013年は4.0%、2014年が3.6%、2015年が3.4%です。安倍政権になってから失業者は1000人中40人から1000人中34人に減少した事になりますが、これが胸を張って言える結果かどうか(苦笑)。
  6. 税収:税収がアップしたという話もあります。2012年度が43.9兆円、2013年度が47兆円、2014年度が54兆円、2015年度が56.4兆円でした。確かに上昇していますが、2014年4月に消費税が5%から8%に上がっている事を忘れてはいけません。消費税増税による税収の増額は5.2兆円で、2013年度から2014年度の増収の7兆円の75%が消費増税によるものです。ただ、法人税率は減税されている事は考慮しておく必要があるでしょう。減税にも関わらず法人税は順調に伸びており企業は好調なのかも知れません。が、これが給与に反映されていない感はみなさんお持ちでしょう。
  7. 株価:経済指標としては捨てておけない数値ですが、最近は電子取引により一方向に振れやすいのが気になりますが。安倍政権発足時の2013年1月に日経平均は10,500円でした。その1年後の2014年1月は16,000円まで上昇しています。が、ここ数日の株価は16,000円前後を行ったり来たり。2年半の間浮き沈みはありましたが、現在は2014年初水準から変わっていないというのが現実です。

 という事でアベノミクスの効果ですが全くなかったとは言いませんが、その限界に来ていると思われます。ざっとみて2013年に成長は認められたものの2014年以降頭打ちの感は否めません。起死回生の一発として放った日銀のマイナス金利も、苦肉の策的な結果で不発に終わっていますし、アベノミクスをさらに噴かす(正しい漢字なのかな?)と言っていますが、正直手が無いと思います。内需を喚起したいところでしょうけど人口減少が進んでおり、年金も減額されているため時間のある高齢者はお金を使わない傾向ですし、若者の消費性向は極めて低調です。少子化対策を怠ったつけが直撃していると言えましょう。
 さて、経済政策以上に安倍政権には胡散臭さが漂います。まず憲法改正です。前回の安保法制の際も、選挙で争点にせずその後「選挙に勝てばなんでもできる」的な傍若無人なふるまいで国会を通してしまう不誠実さ。憲法を改正する事自体は否定はしませんが、自民党の関心事はほとんど9条だけってところが不満ですし、自民党の改正草案を見てもそもそも憲法は為政者を縛る法律だという事を理解していないとしか思えない稚拙な内容です。また最近は熊本地震の復興に向けてあれこれやってます的な発言もしていますが、そんなの時の政府なら行って当たり前の事をさも偉そうに言っているだけで、熊本の人たちの苦難を選挙活動に利用する無神経な行為には反吐が出ます。正直気持ち悪くなるからもうそんな発言しないでって言いたいです。その他普天間基地移転に関しての沖縄に対する態度は国としての態度とは到底思えませんし、税と社会保障の一体改革などと言って消費税を8%に上げたものの、社会保障でどんな成果があったのか?さらに言うなら、過去の首相にはあまり見られなかった辛辣かつ攻撃的な野党批判や揚げ足取り的な発言など身勝手で器の小ささが目立ち極めて不快です(答弁が子供の喧嘩のよう)。
 ただ、今回は野党も困った事をしてくれています。イデオロギーを無視した野党連合など、一体どういうつもりなのかと。まぁ自民党には投票しませんけど、さてどこに投票しようと考えたときに「う〜む」と考えてしまうのでした。