2009/12/21 M J XmasラブソングSP

 東京の社宅周辺は都心にすぐの場所ながら住宅や緑も多いのですが、その関係か野良猫をよく見かけます。私が認識しているだけで社宅周辺には常に4匹の野良猫が徘徊していますが、そのうちの一匹は最近首輪をつけているのを見たので、どこかの家の飼い猫になったようです。
 さて、昨晩は涼しかったので、窓を網戸にしておりました。風呂を浴びて部屋に戻ってくると、「ミャー」という鳴き声がしました。網戸の向こうに見慣れない子猫が佇んでいました。私も「ミャー」と挨拶を返してやりましたが、逃げるそぶりは見せず、そのまま座っていました。そんなこんなで網戸をはさんでしばらく見つめあっていました。その後冷蔵庫に朝食用のハムがあるのを思い出して、小さくちぎって与えようと網戸を「ガラ」と開けた途端に、一目散に逃げて行ってしまいました。数分間見つめあっただけでは信頼関係は築けなかったようです。
 ところで、私のまだ若かりし頃、実家でも猫を飼っていました。飼っていたとは言っても、由緒正しき野良猫の出です。人懐こかったのと超美形だったので、家に招き入れてその後居ついたという感じでした。名前は「ミーくん」で「くん」まで含めて名前でした。白と茶のトラ縞で子猫ではありましたが、野良の時代がある程度長かったためか、家に居るようになってからも、よく外で獲物を仕留めて家に持って帰ってきました。スズメをくわえている姿に良く母親がヒーヒー大騒ぎしていたのを覚えています。また、家の中でも、ゴキブリを見つけると一目散に追いかけたりもしていました。実家はリビングや食卓の床が板張りでよく滑るので、後ろ足をドリフトさせながら豪快に角を曲がってゆく姿は圧巻でした。ただ捕獲した獲物を食べる事はあまりなく、餌が上手に獲れた事を家族に褒めて欲しがっているかのようでした。結構賢いネコで、ドアやふすまは自分で開けれて、家の中は好きなところに移動していました。またトイレは野良の習性か必ず外で済ませていました。用を足したくなると、窓をがりがりひっかくので外に出してやると庭の隅に座ってジーっと済ましていました。
 すぐに家族になじんだ彼は、食べ物も人間と同じような物を良く食べていました。マグロの赤身が好物だったのは猫っぽいですが、ソフトクリームやキャンディーなどの甘い物も大好きでした。またビールは飲みませんでしたが赤ワインは自分からあまり欲しがることはありませんが良く飲んでいました。また乾燥したキャットフードは大嫌いで、どんなに空腹でも絶対に食べませんでした。後で考えるとこのような食生活は彼にとってあまり良いものでは無かっただろうと思いましたが、その時は面白がってつい与えてしまっていました。
 野良猫として保健所につれて行かれてはかわいそうだという事で、首輪を付けようとした事があったのですが、彼は気に入らなかったようで、数日間首輪と格闘し続けていたため、かわいそうになって結局首輪は外してしまいました。外に出かけては2〜3日戻って来ないこともよくあったのですが、首輪がなかったのと美男子だったので、ひょっとしたら他の家でも可愛がられていたかもしれません。
 雄猫の彼は縄張りを守ろうという意識が強いのか、庭にほかの雄猫が入ってくると猛然と立ち向かうのですが、「色男、金と力は無かりけり」とはよく言ったもので、ことごとく戦いに負けてしまっていました。それでも家族が見ている前では良いところを見せたいのか、去ってゆく敵を深追いしては、また傷を作ってもどってくる事が良くありました。怪我が絶えなかった彼ですが、老猫になっても美男子は変わらずで、縁側で日向ぼっこする彼のノミを良くとってやった事を覚えています。が、怪我の近くをノミ取り櫛が通ると痛がって怒って手に噛みつくのですが、その噛み方が甘噛みでそれがまた可愛らしかったのです。が、喧嘩の傷がひどく化膿したりして、病院に通うことが多くなり、あるとき医者から癌を宣告されました。が、その宣告後も結構長い間家族の一員で居たのですが、ある日家を出た後に二度と戻ってくることはありませんでした。
 今も実家に戻ると彼が爪を研いでささくれた柱があったりして、時々ふと彼の事を思い出すのですが、昨日は突然訪れた訪問者のおかげで、久々に彼の事をしみじみ思い出していました。