縮尺と軌間について

 いつもは購入した模型と実車について解説してきましたが、今回はちょっと趣向を変えて模型のスケール(縮尺)と軌間(線路幅)について書きます。まぁ私は鉄道模型には単に趣味としてかかわっているので、間違いもあるかも知れませんが・・・。
 鉄道の線路幅は世界的には非常に多くのバリエーションがあります。日本国内でもメジャーどころでは新幹線や一部の私鉄・地下鉄の1435mm(標準軌間とも呼ばれ欧米の主要鉄道はこの軌間です)、JR在来線や多くの私鉄・地下鉄の採用する1067mm、京王電鉄などの一部が使っている1372mm(いわゆる馬車道軌間)と3種類あり、その他近鉄の一部などで762mmとJR在来線よりもさらに狭い線路幅の路線も存在していますし、もう廃線となってしまっているでしょうけど、地方のローカル鉄道ではもっと多くの軌間の鉄道が存在していました。模型ではこれらを縮小して例えばNゲージは9mm幅の線路を、HOゲージ(16番)では16.5mm幅の線路を走らすわけです。元々幅が異なる線路上を走っていた物を同じ幅の線路上で走らすように縮小するわけで、そこには当然何らかの無理が起きてきます。例えば、JR在来線を1/160に縮尺して9mm幅の線路で走らそうとすると、実物よりも大幅にがに股になってしまってブサイクになってしまいます。
 なお新幹線は従来の日本型車両より一回り大きいので、Nゲージでは1/150ではなく1/160の縮尺で作られています。これはHOゲージでも同じで新幹線車両のみ1/80ではなく世界的なHOゲージのスケールの1/87で作られています。ここで、線路幅と異なるもう一つの縮尺の基準となる車両の大きさという要因が出てきました。例えば、駅のホームとかトンネル入り口やトラス橋などの鉄道周辺の構造物を配置した時に、日本型車両を欧米車両と同じ1/160で作ってしまうと、ホームと車両の間ががら空きになってしまいますし、トンネル入り口に対して車両が小さすぎてブサイクだという事になったりします。逆に日本の車両を1/160で作った場合、その車両向けに作られた環境に欧米型車両を入線させると、ホームにつかえてしまったりトンネルに入れない、橋を渡れないなんて事もおきてしまいます。多くの日本型車両が普及している現在では欧米車両を日本のレイアウトで走らす事は無いでしょうけど、鉄道模型の黎明期には欧米車両と日本車両を混在して走らす事は良くありました。
 さらに3つめの要素としてインフラの問題がありました。鉄道模型というのは欧米から輸入されたものです。最初は欧米で発達し日本に輸入されてきたわけです。Nゲージの日本でのパイオニアのKATO(当時の関水金属)も最初はアメリカ向けに生産、輸出する会社でした。そのため日本で鉄道模型が普及する前にある程度の物、すなわち線路やコントローラーなどは既に欧米の製品が存在していたわけです。鉄道模型におけるコントローラーや線路はいわゆるインフラに当たるわけです。しかも線路は安定した製品が無いとちゃんと走らす事が出来ません。要するに日本で普及する段階では既にインフラが整っていたので、これを利用しない手は無いというわけです。実際私が最初に手にしたコントローラーも海外製で英語表記の物でした。
 これらの要因から、日本ではNゲージは1067mmの線路幅を9mmに合わせる1/119の縮尺でもなく、また世界的なNゲージの1/160を採用して線路幅を6.7mmで作る事もなく、線路幅からも国際的な縮尺からも関係のない何も根拠が無いと思われる1/150が採用されたわけです。
 ただ、ある程度鉄道模型が発展してきた現在ではいくつかの流れが、特にHOゲージの方では起きてきています。一つには1/80の縮尺を生かして線路幅を16.5mmではなく13mmを用いる13mmゲージです。これは私が子供の頃鉄道模型にはまっていた頃からありました。実は昔はHOゲージの蒸気機関車を自作していた事もあり、3台めに作っていたC55を途中から13mmに作り替えた事がありました。さらに現在では世界標準の縮尺の1/87を生かした12mmゲージも存在します。こちらはHOjなどと呼称されているようです。なお、HOjを主張する人たちは1/80の縮尺はHOと呼ぶのは相応しくないと主張してます。確かに鉄道模型の専門誌のTMS(鉄道模型趣味誌)でも16番という呼称を昔から使っていました。実はNゲージでも似たような流れがあります。1/150の縮尺はそのままに線路幅6.5mmに狭める事を行っている人たちがいます。実はこれは私も遠い昔に一度行った事がありました。KATO製のEF65 500番台の車輪部分を9mm幅から6.5mm幅に変更しました。なぜ1067mmの1/150の7.1mmではなく6.5mmかと言いますと、Nゲージよりも小さいZゲージの線路幅が6.5mmでZゲージの線路が流用できるからです。インフラはやっぱり重要なんですよね。EF65の改造は簡単でしたが、電動工具などを持っていない中高生時代でしたのでその後が続きませんでしたし、電気機関車は構造上簡単なのですが蒸気機関車の改造方法の目途が立たなかったという事もありました。さらに既に4畳分のスペースのレイアウトに線路の敷設も完了していたので、6.5mmに変更するために投資しなおす事も考えられなかったという事だったと記憶しています。
 今回は鉄道模型の縮尺と線路幅にまつわる話でした。鉄道模型にはもう一つの新しい流れがありまして、機会があればそちらも書いてみたいと思います。